●反骨の大衆文学●
高知出身の大衆文学の作者は、探偵小説家と大衆小説家の二系列に大別され、それぞれに中央文壇で活躍。
かれらの作品に共通するのは、破邪顕正の反骨精神である。
「万朝報」の経営に成功、「新聞王」の名をほしいままにした黒岩涙香はわが国探偵小説の生みの親でもある。
その翻案探偵小説は満天下の読者を魅了、尾崎紅葉をして「自分たちの小説が売れなくなる」と慌てさせたほどであった。
田中貢太郎は、『旋風時代』の成功で大衆小説家に一時代を画した。文壇の大御所菊池寛に抗し、「博浪沙」を結成、多くの後進を育成した。井伏鱒二・尾崎士郎・田岡典夫・浜本浩らである。
■大町桂月(1869〜1925)
高知市生まれ。帝国大学で学ぶ。在学中、雑誌「帝国文学」創刊に関与、高山樗牛と親交。博文館に入社し、評論などで活躍する。明治37年与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を批判し、論争を呼ぶ。旅と酒をこよなく愛し、多くのすぐれた紀行文により、十和田湖など各地の自然美を紹介した。最後は熱愛の地、蔦温泉で没。
■田中貢太郎(1880〜1941)
高知市生まれ。地元で教員・記者などを経て上京。大町桂月宅に寄宿。田岡嶺雲を知る。実録もので知られ、山内容堂、後藤象二郎、中江兆民らを描いた「旋風時代」は大人気となる。怪談ものもよく知られる。
後進の井伏鱒二のよき師でもあった。
→田中貢太郎と博浪沙をみる
■田岡典夫(1908〜1982)