反骨の大衆文学

高知出身の大衆文学の作者は、探偵小説家と大衆小説家の二系列に大別され、
それぞれに中央文壇で活躍。
かれらの作品に共通するのは、破邪顕正の反骨精神である。
「万朝報」の経営に成功、「新聞王」の名をほしいままにした黒岩涙香はわが国
探偵小説の生みの親でもある。
その翻案探偵小説は満天下の読者を魅了、尾崎紅葉をして「自分たちの小説が
売れなくなる」と慌てさせたほどであった。
田中貢太郎は、『旋風時代』の成功で大衆小説家に一時代を画した。文壇の大御所菊池寛に抗し、「博浪沙」を結成、多くの後進を育成した。井伏鱒二・尾崎士郎・田岡典夫・浜本浩らである。


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田中貢太郎
(1880〜1941)
高知市生まれ。地元で教員・記者などを経て上京。
大町桂月宅に寄宿。田岡嶺雲を知る。
実録もので知られ、山内容堂、後藤象二郎、中江兆民らを描いた「旋風時代」は大人気となる。怪談ものもよく知られる。
後進の井伏鱒二のよき師でもあった。


            田中貢太郎と博浪沙をみる



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田岡典夫 
(1908〜1982)
田岡嶺雲の甥。中学・大学は中退、俳優大学を卒業という珍しい経歴を持つ。
田中貢太郎との出会いが文学への第一歩となる。
「博浪沙」の載せた「しばてん榎文書」を菊池寛に評価され、「強情いちご」で直木賞受賞。
土佐の風土に生きる武士の世界を描いた「小説・野中兼山」(毎日新聞出版文化賞受賞)は、その文学の集大成と言われる。

平成14年度秋季企画展「没後20年 田岡典夫」開催
                     (9月12日〜10月14日)


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浜本浩  
(1890〜1959)
松山市生まれ。小・中学時代を高知で過ごす。
雑誌「改造」の記者として活躍。アインシュタインを京都
案内したり谷崎潤一郎、志賀直哉、佐藤春夫らの担当と
なる。特に竹久夢二との親交は深かった。
記者を辞めた後「浅草の灯」を新聞に連載。
新潮社大衆文芸賞を受賞する。浅草もの以外に、幕末土佐
に取材した歴史小説など、いわゆる土佐ものも多く書いた。
平成10年度春季企画展「浜本浩とその時代」開催
                   (4月24日〜6月14日)

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馬場孤蝶 
(1869〜1940)
高知市生まれ。兄は自由民権家の馬場辰猪。
「文学界」同人として、上田敏、北村透谷らとともに詩や小説を書く。とくに島崎藤村と親しかった。
新体詩「酒匂川」、青春小説「片羽のおしどり」などを発表。
樋口一葉を知り、一葉が死ぬまで親交は続いた。
大正4年には、本邦初訳のトルストイ「戦争と平和」を刊行。
評論によって社会改良活動にもとりくんだ。




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森下雨村 
(1890〜1965)
佐川町生まれ。早稲田大学時代、長谷川天渓、馬場孤蝶らに師事。大正9年、博文館の雑誌「新青年」の初代編集長になり、辣腕を振るう。海外探偵小説の紹介に努める。
江戸川乱歩、横溝正史、甲賀三郎ら多くの才能を発掘、世に送った探偵小説の育ての親だった。
自らも「白骨の処女」「青斑猫」などの探偵小説を発表。
活躍していたが、昭和15年家庭の事情などで帰高。
佐川町で半農半魚の生活を送りつつ、親友西川退三の遺稿「セルボーンの博物誌」の出版にも尽力。
晩年の随筆「猿猴川に死す」は釣り人たちのバイブルとな
っている。
平成17年度春季企画展「日本探偵小説の父 森下雨村」開催
                         (4月21日〜6月2日)


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大町桂月 
(1869〜1925)
高知市生まれ。帝国大学で学ぶ。在学中、雑誌「帝国文学」創刊に関与、高山樗牛と親交。博文館に入社し、評論などで活躍する。
明治37年与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を批判し、論争を呼ぶ。
旅と酒をこよなく愛し、多くのすぐれた紀行文により、十和田湖など各地の自然美を紹介した。
最後は熱愛の地、蔦温泉で没。

生誕140年「大町桂月〜酒と旅と自然を愛した文人展 開催
                   (2009年4月11日〜5月5日)



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