平成23年度計画の発掘調査

いずれも国土交通省関係です
1. 土佐国道事務所関係
  (1) 高知南国道路
    田村北遺跡
  (2) 南国安芸道路
    東野土居遺跡
    徳王子広本遺跡
  (3) 高知西バイパス
    天神溝田遺跡
    バーガ森北斜面遺跡
    西浦遺跡

 

田村北遺跡


 田村北遺跡は南国市田村に所在する遺跡で,国土交通省が計画している高知南国道路建設工事に伴い,平成22年度から本発掘調査を行っています。
 本遺跡は県下でも最大規模を誇る田村遺跡群の北側に隣接しています。田村遺跡群は,縄文時代から近世にかけての複合遺跡で,高知県の歴史を語るうえで重要な遺跡の一つです。平成22年度は,小規模な面積に調査でしたが,弥生時代の竪穴建物跡などが見つかりました。なお,今年度は約2,000平方メートルの調査を行う予定です。(2011.10.13)
 弥生時代中期末〜後期初頭,古代の遺構・遺物が見つかっています。
 弥生時代中期末〜後期初頭では,竪穴建物跡,溝状土坑を伴った掘立柱建物跡,土坑が見つかっています。竪穴建物跡は,調査区の南端で見つかり約半分は調査区外になります。一辺約4mの隅丸方形を呈していたと考えられます。この竪穴建物跡からは,太型蛤刃石斧の未成品が出土しました。掘立柱建物跡は,2間×3間?の規模のもので,桁行側に幅1m,長さ5m,深さ40cmの溝状土坑が伴います。この溝状土坑から,多くの弥生土器が見つかりました。このような掘立柱建物と溝状土坑の組み合わせは田村遺跡群や土佐市の北高田遺跡でも見つかっています。
 土坑は,均整のとれた隅丸長方形や隅丸方形を呈しているものが多いです。そのうち最大規模のものは,長軸2.3m,短軸1.6m,深さ約70cmもありました。形や大きさで,いくつかのグループにわけることができそうです。これらの土坑はすべて貯蔵穴と考えられます。上で述べました掘立柱建物跡も貯蔵施設と考えると,土中に保管するものと掘立柱建物内に保管するものと区別されていた可能性があります。
 この時期は,隣接する田村遺跡群が最盛期を迎える時期で,この周辺まで居住域がひろがっていたことがわかりました。
 古代では,掘立柱建物跡,溝跡が見つかりました。掘立柱建物跡の柱穴は一辺約70cmから90cmの平面形が隅丸方形のもので,5基見つかりました。柱穴と柱穴の心々間の長さは約1.6mです。2間×3間?の掘立柱建物跡に復原できそうです。また,棟方向は北方向から約12度東に傾いており,香長平野の条里の方向に一致しています。(2011.11.18)
 1月31日をもちまして,今年度の調査が終了しましたので,調査結果を簡単にまとめておきたいと思います。合計で約2,800平方メートルの調査を実施し,縄文時代,弥生時代,古代の遺構・遺物が見つかりました。遺構では竪穴建物跡5棟,土坑跡約60基,溝跡約20条,ピット約240基,自然流路跡2条などが見つかり,遺物では縄文土器,弥生土器,石器,土師器,須恵器などが見つかりました。

 今回の調査で最も古いものは,縄文時代晩期の土器で,晩期中葉の浅鉢の破片です。1点しか見つかっておりませんので,具体的な内容までは残念ながらわかりません。今後の周辺部の調査に期待がもたれます。田村遺跡群では,今までの調査においても縄文時代晩期の遺構・遺物は皆無なため,弥生時代になり突然,集落が出現したと考えられています。周辺部で縄文時代晩期の様子が明らかとなれば,田村遺跡群の弥生文化成立への過程についても復原できそうです。
 弥生時代の遺構・遺物は,中期末から後期初頭のものばかりです。竪穴建物跡と貯蔵穴の組合せが,いつくか集まって一つのグループを作っていたようです。高知龍馬空港の拡張に伴う大規模な発掘調査では,400棟を超える竪穴建物跡が見つかっています。その大部分は中期末から後期初頭のもので,4あるいは5つのグループにわけることができます。今回の調査で見つかった居住域は,それらのグループとは別のものと考えられます。今調査区の竪穴建物跡の大きさは比較的小型であり,遺構の密集度合いも低いことから「弥生田村ムラ」の縁辺部と考えられます。
 古代の遺構・遺物は,掘立柱建物跡1棟と自然流路跡1条が見つかりました。自然流路跡からは,須恵器や土師器など多くの遺物が見つかりました。接合すれば元の形に復原できるものも多くあり,一括して廃棄された可能性があります。また,見つかったものの中には緑釉陶器や黒色土器なども含まれていました。これらのものは官衙関連の遺跡から見つかることが多く,上で述べた掘立柱建物跡の存在と整合性が認められます。
 最後になりましたが,調査にあたりましては地域の皆樣方をはじめ多くの方々のご支援・ご協力を賜りましたことを厚くお礼申し上げます。また,今後とも文化財調査へのご理解とご協力をお願いいたします。(2012.1.31)