マルク・シャガール展 「聖書」 第二期
「聖書」第二期 ~モーゼの十戒と終わりなき戦い~
会期: 平成21年6月2日(火)~7月20日(月)
会場: 第1展示室
1910年からパリで活躍していたシャガールは、故郷ロシア、ヴィテブスクに里帰りしていた1914年、折から勃発(ぼっぱつ)した第一次世界大戦のために出国できなくなりました。そしてロシアには革命の嵐が吹き荒れます。シャガールも社会主義政権に巻き込まれ、ヴィテブスクの人民執行委員や新しく設立されたアカデミーの校長などに任命されますが、信仰を否定されたことや同僚たちの相次ぐ背任などで、だんだんと革命に幻滅(げんめつ)していきます。
1922年、最終的にロシア革命を見限ったシャガールは国外脱出を図り、再びパリへ向かいます。旺盛(おうせい)な制作活動を再開したシャガールに、美術界の大立者であった画商ヴォラールは「旧約聖書」に材を取った銅版画による版画集の制作を依頼します。シャガールは民族のアイデンティティを強く意識し、エジプト、パレスチナ、シリアへの取材旅行を敢行、またレンブラントの銅版画の技巧を研究するためオランダにも出かけました。
1939年のヴォラールの急死や、第二次世界大戦の勃発によるアメリカへの亡命などで中断されていた《聖書》は、1956年にようやく完成しますが、その2年後、シャガールはモノクロームの銅版画に水彩で着色を試み、あらためて出版します。当館の所蔵品はこの手彩色によるものです。
全105点からなるこの版画集を、3期に分けて展示しますが、2期目にあたる今回は、「モーゼの十戒」、「サムソンとデリラ」など、ハリウッド史劇でも有名なエピソードが展開されます。ユダヤ民族の聖典に真正面から取り組んだ、シャガール畢生(ひっせい)の大作をご堪能(たんのう)ください。
また今回は香南市赤岡町で開催される「絵金祭り」開催にあわせ(7月18日、19日)、当館所蔵の絵金の芝居絵をコーナー展示いたします。
油彩画
|
作 品 名 |
英 名 |
制作年 |
寸法(cm) |
|---|---|---|---|---|
1 |
村の祭り |
The Kermes |
1908 |
68.0×95.0 |
2 |
空を駆けるロバ |
The flying Donkey |
1910 |
55.0×46.4 |
3 |
路上の花束 |
Flowers on the Street |
1935 |
90.2×116.7 |
4 |
花嫁の花束 |
The Bouquet of the Bride |
1934-46 |
81.5×65.5 |
版画集《聖書》
初版1958年 Ed. 28/100 エッチング、手彩色
№ |
作 品 名 |
英 名 |
寸法(cm) |
1 |
岩から水を吹き出させるモーゼ |
Moses striking Water from the Rock |
29.7×23.5 |
2 |
神から石板を授かるモーゼ |
Moses receiving the Tablets of the Law |
28.3×22.5 |
3 |
黄金の子牛 |
The Golden Calf |
29.0×23.0 |
4 |
石板を砕くモーゼ |
Moses breaks the Tablets of the Law |
30.0×22.8 |
5 |
アロンと燭台 |
Aaron and the seven-branched Candlestick |
29.0×23.0 |
6 |
モーゼの死 |
Death of Moses |
30.5×24.5 |
7 |
ヨシュアに祝福するモーゼ |
Moses blesses Joshua |
32.0×24.2 |
8 |
主の命により武装したヨシュア |
Joshua armed by God |
29.4×23.3 |
9 |
ヨルダン川の道 |
Crossing of the Jordan |
30.0×23.0 |
10 |
剣の天使の前のヨシュア |
Joshua before the Angel with a Sword |
31.8×22.3 |
11 |
エリコの町を前にするヨシュア |
Joshua before Jericho |
32.8×22.5 |
12 |
律法の言葉を読むヨシュア |
Joshua reads the Word of the Law |
29.5×23.3 |
13 |
太陽を止めるヨシュア |
Joshua stops the Sun |
29.0×24.0 |
14 |
ヨシュアと征服された王たち |
Joshua and the vanquished Kings |
29.8×23.0 |
15 |
ヨシュアの訓戒 |
Joshua's Exhortation |
33.8×22.5 |
16 |
ヨシュアとシケムの石 |
Joshua and the Stone of Shechem |
29.7×23.2 |
17 |
女預言者デボラ |
The Prophetess Deborah |
29.8×25.0 |
18 |
マノアの生贄 |
Manoah's Sacrifice |
32.4×23.5 |
19 |
サムソンと獅子 |
Samson and the Lion |
26.0×31.8 |
20 |
ガザの町の門を担ぎ上げるサムソン |
Samson carries off the Gates of Gaza |
28.5×22.5 |
21 |
サムソンとデリラ |
Samson and Delilah |
28.0×24.3 |
22 |
柱を倒すサムソン |
Samson destroying the Columns |
29.0×24.5 |
23 |
主に祈るアンナ |
Anna invokes God |
27.2×23.3 |
24 |
主に呼ばれるサムエル |
Samuel called by God |
28.3×24.0 |
25 |
サウルの塗油式 |
Anointing of Saul |
31.7×22.0 |
26 |
サウルとダビデ |
Saul and David |
29.5×24.0 |
27 |
ダビデと獅子 |
David and the Lion |
32.0×24.8 |
28 |
ゴリアテを倒したダビデ |
David Vanquisher of Goliath |
27.6×23.5 |
29 |
サウルの前のダビデ |
David before Saul |
31.3×23.5 |
30 |
サウルの死 |
Death of Saul |
28.0×23.5 |
31 |
弓の歌 |
Song of the Bow |
31.3×23.5 |
32 |
ダビデ王 |
King David |
31.4×24.3 |
33 |
エルサレムに運ばれる神の箱 |
Ark carried to Jerusalem |
32.0×22.7 |
34 |
ダビデとバテシバ |
David and Bathsheba |
28.3×25.0 |
35 |
ダビデとアブサロム |
David and Absalom |
31.0×24.5 |
版画集《聖書》はすべて故・大川功氏の寄贈
マルク・シャガール
Marc Chagall (1887-1985)
シャガールはロシア、現在のベラルーシ共和国にある寒村ヴィテブスクの貧しいユダヤ人の家庭に生まれ、帝都ペテルブルグの美術学校で学びました。
1910年から14年までパリに住み、詩人サンドラール、アポリネールらと親交を結びます。キュビスムの空間的効果、ドローネーらの鮮烈な色彩表現に影響を受けましたが、子供の頃の記憶からイメージを引き出し、詩的で豊穣な、シャガールならではの幻想的な様式を展開しました。
1914年、ベルリンの表現主義の牙城シュトゥルム画廊で個展を開催、その後も同画廊と関係を保ち、ドイツ表現主義の運動に影響を与えました。二度にわたる世界大戦の戦火や、ヨーロッパ中を踏みにじったナチ政権によるユダヤ民族迫害、アメリカへの亡命、制作の霊感の源であった愛妻ベラの死去など、さまざまな苦難を乗り越えて画業を深め、世界中の人々に愛と希望を与え続けました。
シャガールは1950年から南仏のヴァンスに定住しました。晩年にいたるまで旺盛な制作意欲を発揮しましたが、1985年に惜しまれつつ死去しました。享年97歳でした。
版画集《聖書》
The Bible, 1958
1922年、ロシアからパリへ向かう途中、シャガールはベルリンに滞在し、版画家シュトゥルックから銅版画の技法を学びます。その後シャガールは画商ヴォラールから「旧約聖書」に材を取った銅版画による版画集の制作を依頼されます。自らのアイデンティティを強く意識したユダヤ人シャガールは、エジプト、パレスチナ、シリアへ取材旅行を敢行し、またレンブラントの技巧を研究するためオランダにも出かけました。
《聖書》はヴォラールが急死した1939年の段階で66点制作されていましたが、第二次世界大戦の勃発や自身のアメリカへの亡命などで中断され、再び着手されたのは1952年になってからでした。版画集は1956年に完成しますが、2年後、シャガールはモノクロームの銅版画に水彩で着色を試み、出版します。高知県立美術館の所蔵品はこの手彩色版です。
■特別出品:絵金の芝居絵
| № |
作品名 |
制作年 |
技法 |
寸法 |
1 |
太平記忠臣講釈 七条河原惣嫁宿 |
不詳 |
紙本彩色、二曲屏風 |
156.3×125.1 |
2 |
伊達娘恋緋鹿子(櫓のお七) |
不詳 |
紙本彩色、枠 |
119.0×170.0 |
絵 金
Ekin(1812-1876)
絵金は現在の高知市に生まれました。本名は弘瀬洞意。通称は金蔵。別号に雀七、友竹、友竹斎、雀翁があります。1824年、仁尾鱗江に絵を習い、1827年、藩の絵師池添楊斎美雅に入門、美高の名をもらいます。1829年、江戸土佐藩御用絵師の前村洞和に入門し、駿河台狩野家は7代洞白に入門したともいわれます。1832年、帰郷して家老桐間家の御用絵師になり、林洞意を名乗ります。1844年頃、贋作事件によって失脚、身分を剥奪、御用絵師を解任されて一介の町絵師に戻り、弘瀬柳栄を名乗ることになります。その後暫くして高知県中央部の在郷町、浦町商人の庇護で、歌舞伎、浄瑠璃を題材に芝居絵、屏風、絵馬提灯、奉納絵馬、横職、絵巻物、凧絵等多様に制作しました。奔放な墨線の濃淡、泥絵具を駆使した強烈な色彩に天分を発揮し、土佐芝居絵の絵金として高知の庶民に親しまれました。異端の絵師として1960年代から評価が高まり、高知県赤岡町の「絵金祭り」等、高知県内の祭事で作品が見られます。高知県立美術館では、1996年、「土佐の芝居絵と絵師金蔵展」を開催しました。
【予告】
「聖書」第三期 ~ソロモンの栄華と民族の興亡~
7月22日(水)~9月13日(日)
KoMPal会員(年会費5,000円)、年間観覧券所持者(2,500円)は、無料でご覧いただけます。













